2022年3月21日月曜日

『科学という考え方』

酒井邦嘉

「ケプラーとブラーエの出会いは、歴史的に見れば理論と実験を結びつける理想的なものであったが、二人の天才の関係は、ゴッホとゴーギャンと似て緊張状態が続いたという。ケプラーは次のように述べている。「ブラーエは最良の観測結果をもっており、いわば新しい建物を建てる資材を持っているわけです。ただ一つ、彼に不足しているのは、独自の設計図を持ち、このすべてを使いこなす建築家です。」」(p.83)

 設計図とは、科学的な着想・考え方のことで、建築家とは、これを論理的に組み立てる人のことだろう。緻密な分析や最先端の技術は、ビッグピクチャー(広い視野、将来展望)をもったデザイナーの発想や制作によって生きる。ブラーエは天動説にこだわっていたし、ケプラーはブラーエのデータがなければ仮説を実証することができなかった。資材を蓄え、資質を磨き、世界を見据え、未来をつくる。『すごい実験』の多田将さんは次のように言っていた。「科学の世界は、東急ハンズみたいのものです。その研究が何の役に立つかは置いておいて、ハンズの棚に並べるんです。そしたら、次の世代の学者が棚を見て、自分の役に立つものをピックアップしていきます。そうして作り上げたもの、それがたとえば、この携帯電話なんです。」科学の歴史では、すぐに役立ちそうにないものがよく役に立つ。「goodpenguin」での教材づくりと100均の棚の関係もこれに近いかも。

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