元村有希
「科学・技術の成果の光ばかりに気を取られ、影の部分を見ようとしない人々を「文明社会の野蛮人」と名付けた人がいます。オルテガ・イ・ガセットは、『大衆の反逆』で「大衆ほど無責任で気まぐれでわがままな存在はいない」といいます。・・・ 文明社会に生きているというだけで文明人だと錯覚しているけれど、その文明に頼りきるうちに、人間が本来、身につけておくべき直感力や判断力、理性、忍耐力、羞恥心などが忘れ去られてしまっているのではないか。オルテガは、80年以上前に書いたこの本で警告を発したのです。」(p.22~p.25)
この指摘は、単に最新機器に頼りすぎるなとか、カガクの仕組みに目を向けろとか、ものづくりの技術を身につけよとか言っているのではない。「無責任できまぐれでわがまま」であること、不平や不満をいうばかりで都合の悪いことには沈黙する態度に警告を発しているのだ。ガソリンが高い、電気代が高いなどと文句ばかりいっているから、原発の再稼働を許してしまう。併せて、核兵器の開発や温暖化を加速する社会システムなど、科学者や政治家による文明破壊の動きを見過ごさないで、これに抵抗する力を持たねばならないということだ。秋岡芳夫さんは『新和風のすすめ』でこんなことを書いている。「いまの日本には類猿人(るいえんじん)が増えている。類人猿(るいじんえん)も類猿人もバナナは好きなようだが、類猿人は買って食べ、類人猿は木に登って食べる。両方ともに自分で種をまいたり肥料をやったりしてバナナを作ろうという意識はまったくない、というところで共通している」と。科学・技術というレベル以前に、農作物も、道具ひとつもつくれない、つくろうとしない姿を自覚しなければならない。
(忙しくなってきたので、投稿はしばらくお休みに)
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