塩野七生
「想定しなかった事態に直面したときに、日本人はまだまだ弱い。事態の対処だけでなく、想定していなかった質問をされた場合の答え方、等々。それを眼にするたびに私は思う。日本人て何とまじめなのだろう。だが同時に心配になる。世界では、それも権力者ともなると、人が悪いほうが当たり前なのだから。戦術には、忍者の戦法もあるんですよ。それがユーモアでありアイロニーである。ユーモアで相手との間に距離を保ち、アイロニーで突くという戦法だ。」(p.80)
アメリカ滞在中にたくさんのイベントに参加した。そこで行われるスピーチには、必ず観客を笑わせるジョークが入る。内容を聞かせるためには、まず心を掴まないといけないのだ。(寝ている生徒を怒る先生は、自分の話が退屈であることを認識しないといけない。)「ユーモア」と「アイロニー」と聞いて、千葉雅也さんの『勉強の哲学』を思い出した。アイロニーとは「ツッコミ」で、周りの当たり前に否定を向けること、ユーモアとは「ボケ」で、見方をズラして考えること。これらは、環境から自由になる思考スキルであると、千葉さんはいう。塩野さんが心配しているのは、「まじめ」にみえているのは、この環境(周囲の目)に縛られているのだよ、ということだろう。「人が悪い」という相手に飲まれることなく、すっと身をかわしたり、駆け引きを楽しんだり、いま風の「忍者戦法」を磨かねばならない。ボケとツッコミの得意な関西人ならなおさらに。
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