2022年2月11日金曜日

『数学する身体』

 森田真生

「古代ギリシアにおける数学は独白的であるよりも対話的で、それが目指すところは個人的な得心である以上に、命題が確かに成立するとの「公共的な承認」だったのだ。」(p.58)

 数学を対話的に学ぶと、物事をもっと深く見るようになると考えて、私も教材や授業の流れを工夫してきた(2019年の数学教育学会では「対話による探究活動を取り入れた数学授業の実践」の報告も)。上手いインタビュアのように、相手の意見に対して「嘘やん」「何で」「それからどうしたん」と続けざまに深掘りできる人が、相手の胸の内を引き出していく。授業では、自分では分かっていたつもりが相手に分かるように説明するのは難しかった、例をあげたり場合分けをしたり絵を描いたり工夫していくうちに自分の理解が深まった、説明することが楽しいことだと知った、といった生徒の声が聞かれた。ときには新しい疑問が湧いてきて「こんな場合どうする」と仲間を引きずり込むのだが、一緒に悩んでくれる友だちがいることが若者の特権。

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