2022年2月6日日曜日

『わたしは「セロ弾きのゴーシュ」』

中村哲

 「日本では想像できぬ対立、異なる文化や風習、身の危険、時には日本側の無理解に遭遇し、幾度か現地を引き上げることを考えぬでもありませんでした。でも自分なきあと、目前のハンセン病患者や、旱魃にあえぐ人々はどうなるのか、という現実を突きつけられると、どうしても去ることが出来ないのです。・・・ 自分の強さではなく、気弱さによってこそ、現地事業が拡大継続しているというのが真相であります。・・・ 賢治の描くゴーシュは、欠点や美点、醜さや気高さを併せ持つ普通の人が、いかに与えられた時間を生き抜くか、示唆に富んでいます。遭遇する全ての状況が、天から人への問いかけである。それに対する応答の連続が、即ち私たちの人生そのものである。・・・」(p.224~p.225)

 この本は、2019年12月に亡くなられた中村哲さんの過去のインタビュー集である。目の前の現実に誠実に向き合い、天からの問いかけをしっかりと受けとめ、なすべきことをそのまま行動に移してこられた方であり、ゴーシュのように素直に生き、宮沢賢治のように人のためにすべてを捧げられた方であることに、改めて強い感銘を受ける。

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