2022年2月17日木曜日

『パラレルな知性』

鷲田清一

「本来、大学で学ぶということは、全体を見渡し、何が一番大事なのかという「価値の遠近法」を身につけることだったはずではないのか。それは、さまざまな事態に直面した際に、絶対に失ってはならないものと、あればいいというものと、端的になくてもいいものと、絶対にあってはならないものという四つを、即座に見分ける力をつけることである。」(p.275)

 右肩下がりの時代には、何をあきらめるべきかを考えることになる、それは社会がまともになっていくことでもある、と鷲田さんは語る。一番大切なもののために、これまで同じように大切にしてきたことをあきらめる、この決断はなかなか厳しい。でも、歳をとってできなくなってきたことに対して、執着しなくてよいのだよ、という労(いたわ)りのことばにもとれるのだ。つまりは、価値の遠近法というシャープなナイフを心の中にもちあわせておくことが肝要。

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