2022年2月23日水曜日

『ふだん着の寺田寅彦』

池内了

 「子どもたちに少しでも病気の兆候があると、すぐに医者を呼んで、口うるさく医者の言うことを聞くよう説教している。ところが、自分が病気になった時、痛みを辛抱してなかなか医師の厄介にならず、研究室で喀血したり、倒れたりして漸く入院する始末である。・・・ 客観的に物事を見る訓練ができている科学者なら、自分の行動・行為がフェアでないと気付くはずだが、寅彦はこの点では科学者ではなく平凡な親であった。」(p,94~p.95)

 寺田寅彦さんを信奉する人は読まない方がよいかもしれない。家族の前ではちょっとわがままなお父さんという内幕をみたい人向け。寅彦さんはとんでもなくたくさんの随筆を残している。その中の一節、「頭の悪い人は、はじめから駄目にきまっているような試みを一生懸命につづけている。やっとそれが駄目と分かる頃には、しかし大抵何からしら駄目でないほかのものの糸口を取り上げている。科学の歴史はある意味では錯覚と失策の歴史である。」人間味溢れる、こういった言いまわしも私は好きだ。

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