ダニエル・カーネマン
「心理学史できわめて有名な実験の一つに、マシュマロテストと呼ばれるものがある。4歳児の目の前にマシュマロ1個が入った皿を置き「いつでも食べてかまわない。でも食べずに15分我慢できたらもう一個あげる」と言って実験者は部屋を出る。・・・ 子供たちの約半数は15分待つ難行をやってのけるのだが、・・・ そして実験から10~15年後に、誘惑に勝った子供と負けた子供の違いが明らかになる。・・・ 4歳のときにセルフコントロールを示した子供たちは、知能テストで大幅に高い点数をとった。」(上巻p.88~p.89)
さまざまな論文や実験をもとに、人の判断や行動の危うさを指摘する。直感と熟考のズレの具体的事例の数々は数学の教材としても秀逸である。実は、上記の話にはそのときの子供の様子も紹介されている。我慢できた子供たちの大半は、後ろを向いたり、数を数えたり、目を覆ったり、実にさまざまな誘惑から注意を逸らしていた、というのである。これは、私たち大人も見習うべきことだ。困難や誘惑事に頭をいっぱいにしたままじっと耐えるのでなく、注意力を別の方向に向けたり、全く違うことを始めたり、自分の中で場面転換を図ることができるかどうか。人からの批判をストレートに受けとめるばかりでなく、変化球を投げ返す能力もその一つといえるかもしれない。
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